綿菓子と唐辛子


「…ふ、ひどい顔」

「う、うるさいっ」


…あ。また、“あの”ヒメに戻った。


「怒んなよ」

「ナツが笑うからだろ!」



もう1人のヒメが染みついているのかなんなのか、必死になると出てくる独特な言葉使い。

それさえも、おかしくて笑ってしまう。


ぷぅ、と膨らませている頬をキュッとつまむと、ヒメはまた幸せそうに目を細めた。


…よかった。また、この笑顔が見れて。









「あれ、相坂帰ってたの」

「…!」


しばらくヒメと触れ合っていると、コンビニから本郷が顔を出した。

手に、4本の飲み物を持って。



「ごめん、何がいいか分からなかったんだけど、とりあえず飲み物。暑いし」


ん、とお茶を俺たちの目の前に差し出す本郷。

…ほんとに、気がきくやつだなあ。



「あ…ありがとう……」



本郷の手から飲み物を受け取ったヒメは、なんとも言い難い表情をしていた。

気まずいのか、あまり本郷の方をしっかりとは見ようとしない。

…これは、プールの時と同じ反応だ。





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