綿菓子と唐辛子
「そういえば、相坂の母ちゃんは?」
「あ…、えっと、ここには車置けないからって、駐車場に…」
「あー、なるほどね」
「…」
本郷はあまり気にしていないようだが、ヒメはやっぱり気まずそうに目を伏せて、時々俺の方を覗き込んでいた。
「…」
あー…。なるほどね。
目の前に今の彼氏と元彼氏が一緒にいるのが気まずさ極まりないのか。
まぁ、そうだよな。俺だって気まずくないのかって言われたらそうでもないし。
…でも。
「あのさあ、ヒメ」
「ん?」
でも、俺は元恋人とかそういうの関係なしに、本郷には色々と世話になったわけだし。
なぜか、そういう風には見れないんだよな。
「俺ね、本郷と仲良くなったよ」
「…えっ…?」
本郷が、ヒメの母親の行方を気にして、大通りに出ている間に、俺はヒメに耳打ちした。
「仲良いって、あれだよ。俺と勇哉みたいな関係かって言われたら違うけどさ。色々とね、ヒメのことを一緒に考えてくれてたんだ」
「…本郷くんが?」
「そう」
「……じゃあ、」
「ん?」
「じゃあ…わたしと…本郷くんのことも…」
もごもごと、より気まずそうに、ヒメは下を向いた。
あぁ、なるほど。それを知られてしまったと思ってるんだな、ヒメは。
「ん、もちろん聞いたよ」
「そっか…」
そんな顔、別にしなくてもいいのに。