綿菓子と唐辛子



「おあ、びっくりした。どうしました?」



相変わらず飄々としたチャラ男だ。
最後までかっこいいところ見せたいのかもしれないけど、そうはいかない。

俺だって、プライドってものがあるんだから。




「色々と、ありがとう、本郷」




お礼くらい、言えないとだめだろ。




「ははっ、別にいいのに」

「よくねーよ」



ここまで、俺を導いてくれて、ヒメを説得してくれて、同じヒメを好きだったもの同士なのに、ちゃんとこうやって背中を押してくれて。



「…また、くるから」

「あぁ、いつでも来てください。こんな田舎でよかったら、ですが」



本当に、俺たち…



「やっぱり、ナツさんとは普通に会って普通に友達になってたらよかったかもしれないっすね」

「…!」



じゃ、今度こそ、と、手のひらを耳の横で振った本郷。



「本郷、俺も、同じこと思ったよ」



そんな本郷に向けて、ちゃんと、気持ちを伝える。


…すると本郷は、一度だけ振り返って、困ったように笑った。



「もしそーなってたら、お姫様争奪戦でしたね」





—————本郷。


俺はただ、遠のいていく背中を見ていた。







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