綿菓子と唐辛子
伸びていく影を見つめていると、後ろから、走ってくる足音が聞こえて来て。
「本郷くん………!!!」
息を切らしたヒメが、本郷の元へ駆け寄っていく。
「本郷くん…!待って…!!」
「———…」
わかってる。
きっと、ヒメはヒメなりに、本郷に伝えたいことが見つかったんだろう。
きっと、今までのヒメを一番近くで見守ってきたのは本郷だから。
あとは、あの二人に任せてみよう。
「ヒメのお母さん。先に入ってましょう。荷物持ちます」
「えっ?!あ、うん、ありがとう!」
どんな話をするかなんて、だいたい想像はつくけれど。
ヒメが、伝えたいことが伝わればいい。
本郷が思っていることが伝わればいい。
お互い、固まっていた気持ちを、共有できればいい。
そう思って、送り出した。