綿菓子と唐辛子
その日は、ヒメの家に泊めてもらうことになった。
そして、俺とヒメは、明日のお昼の新幹線で、東京に戻る。
「ナツ、麦茶飲む?暑いでしょ」
「おお、ありがとう」
お風呂からあがると、ヒメが冷たい麦茶を用意してくれていた。
お母さんと女子トークをしていたからか、口調がもう女の子に戻っている。
「ヒメのお母さんは?」
「向こうの部屋で寝てる。今日はもう疲れちゃったんだって」
「…そっか」
俺の布団は、前にヒメが使っていたらしい部屋に敷かれていた。
そして、1枚の襖を挟んで、ヒメの布団がある。
…なんか、緊張するな、この空間。
いや、ヒメのお母さんがいる時にやましいことなんかできないけどさ。
「ナツ、それ飲んだら、ちょっとベランダ出ようよ」
「ん?いいよ。星見るの?」
「んーん。ちょっと涼みたいだけ」
「え、麦茶飲んでんじゃん」
コップを置いて、ヒメに連れられるまま、腕を伸ばすと、ヒメは俺の腕を引っ張りながら「ナツは分かってないなあ」と笑った。