綿菓子と唐辛子


「こっちきて。ここから吹く秋の風がね、とっても気持ちいいの」


コソコソとベランダに連れていかれて、そっとドアを開けて外に出る。


「わ……」


確かに、ドアを開けた瞬間、冷たい心地良い風が、ふんわりと俺たちを包んだ。


「ほんとだ。ちょー気持ちいいね」

「でしょ?東京もこうなのかな」

「いや、ここまで涼しくねーよ、あのマンションは」

「えー」




小さく笑うヒメを、後ろから抱きしめて。


「……っ」


そのまま、左肩に、顔を寄せた。



「な、ナツ…」

「ん?」

「ど、ドキドキするよ…っ」

「うん、俺も」


でも、この涼しい空気の中、ヒメの体温が高くて、そして俺も火照っていて、その温度差がまた気持ち良く感じて。


「…離したくない」




ずっと、こうしていたいと思った。










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