綿菓子と唐辛子
「ナツ…」
「ん?」
真っ暗な空。星と月だけが、輝いている。
そんな中に、ヒメの声が響いていく。
「うちね、さっきちゃんと、本郷くんに話してきたよ」
「…」
…あぁ、さっきのことか。
この雰囲気で、元彼の名前を出すか…。まぁいいんだけど。ヒメらしいし。
「今までありがとーって。色々支えてもらってたのに、わたし、当時は何も返せなかったから」
「…うん」
…知ってる。ヒメが当時、本郷に会うのも辛かったこと。それが歯痒かったことも、全部知ってる。
「あの時のうちは、きっと本郷くんのこと好きだったんだと思う、ちゃんと」
「うん、分かってる」
「けどね、今はちゃんと、わたしはナツが好きだよ。ちゃんと、ナツに恋してる」
…………………ヒメ。
「ちゃんと、もう一度、恋ができたんだよ。それはきっと、ナツに出会えたからだね」
「………っ」
ーーたまらなくなった。
俺に、ちゃんとまた恋をしたと笑って言ってくれるヒメに、どうしようもなく、胸を掴まれて。
「…俺も、ヒメが好きだよ」
こんな言葉じゃ足りないとか、よく聞くけど、本当にその通りだ。
きみが今ここにいてくれること。
俺の腕の中にいてくれること。
俺の目の前で、笑ってくれること。
…それがどんなに、しあわせなことなのか。
俺はまた、改めて感じることができたよ。