綿菓子と唐辛子



ヒメの肩を掴んで、振り向かせた。

俺を見つめる大きな目に吸い込まれそうになりながらも、また、包み込むようにギュッと抱きしめる。



「…ナツ、だいすき」

「俺の方が好きだよ、ばか」

「んーん、わたしだよ」



背中に回された小さな手のひらは、キュッと俺の服を掴んだ。


胸あたりで、スウッと息を吸うヒメは、俺の存在を確かめるように背伸びをして、またギュッと身体を掴む。

それを数回繰り返したあと、少しだけ力を抜いて、俺の方を見た。



「ねぇ、ナツ」

「ん?」


今までにあまりない距離感に、どきりとする。






「…ナツ、キスしよ」



少しだけ涙に濡れて、泳いでいる宝石のような黒い目を見ていた。

さらりと発した言葉だったけれど、一瞬固まってしまった俺を見て、みるみるヒメの顔は赤くなっていく。



「あっ…えーっと、ちょっと待って…今のナシ…」

「…」

「ほんとごめん…!」



暗いのに分かる、ヒメの表情。

そして、ものすごく速い、鼓動。







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