綿菓子と唐辛子
プシュっとドアが開いて、荷物を持った寝起きのヒメを支えながら、ホームに出る。
「東京」と書かれてある看板を見ると、たった数日離れていただけなのに、久しぶりに帰ってきたような感覚になった。
「ヒメ、手離すなよ」
「うん…」
これから、ヒメと電車に乗って、同じアパートに帰る。
ヒメの地元を離れて、俺が育った街に足を踏み入れた瞬間、またさっきの覚悟がより高まった。
——今度は、俺がヒメを守らないと。
〜♩〜♩
新幹線の改札を出て、アパートの最寄駅に行くために、電車を探していると、ポケットに入れていた携帯のバイブが鳴った。
「ナツ、電話?」
もうすっかり目が覚めたヒメの隣で、スマホを開ける。
「んー、そうみたい…。って、勇哉から電話だ」
ここ数日、ヒメのところに行っている間は、まったく連絡とれなかったから、さっき「これから帰る」とは連絡したが…。
それに気づいて電話してきたな、コイツ。
「はい、もしもし」
駅内は色々とうるさくて、電話をとるの苦手なんだけど。まぁ仕方ないか。
『あっ、ナツ?!今おまえどこにいるんだよ!こっちにはもう着いたのか?!もうもしかして電車乗ってる?!』
「うるせーな…」
通話ボタンを押した瞬間、右耳に聞こえて来る大声。なんて声だ、まったく。