綿菓子と唐辛子
「ヒメ、俺と一緒にやろ」
「…」
コクリと、ヒメがうなずいた。無言だ。また何かを考えているのか、別のことなのか、ちょっとやっぱり掴めないけど。
トマトを洗って、まな板の上でキレイにトマトを切っていくヒメ。
慣れている手つき。完璧な薄さ。まったく崩れていないカタチ。
繊細なトマトを包み込むような、小さな手。なんというか、全てにおいて、完璧だ。完璧というか、理想?
「…ヒメ、うまいな。料理好きなの?」
「…」
「ヒメ?」
集中してる?
「……気持ち悪い、だろ」
「え…?」
パタン…パタン…と、包丁が入る音だけが響いてる気がした。
やはり、素人の手つきじゃない。
トマトをこんな風にキレイに切るのだって、コツがいるんだ。普通に切っちゃったら、中の種やら汁やらが飛び出して、大変なことになる。のに。
「…ふだん、こんなガサツな女が料理は得意なんて。面白いだろ」
「……は?なんで…」
「…らしくないからだよ」
らしくない?なんだそれ。なんだその日本語。女の子らしくない、ってことか?
つーか、なんで、そんなこと……。