綿菓子と唐辛子
ヒメと愛を確かめて、抱きしめたまま寝転んだ。
「…ヒメ、大丈夫?」
「ん…大丈夫」
暗い部屋で、まだ微かに荒い息遣いが聞こえてくるけれど、俺たちはそのまま身体をくっつけていた。
「…ふふ、ナツ。結局お風呂入んないままじゃん」
「…あ。そうじゃん。うわ、夏なのにこれはやばいな。入らなきゃな」
さっきまで甘い時間が流れていたにも関わらず、いつものようにケラケラと笑いだすヒメ。
何が面白いのか分からないけど、笑っているってことは、きっとヒメは今、しあわせなのだ。
「明日から学校だしな。ちゃんと入らねーと、周りに臭いって言われるぞ」
「そ、それはナツもだろ!」
「はは、そっか」
さらりと目の前を流れるヒメの髪を撫でる。
「…どうしたの?」
隙間から見える大きな目が、俺を捉えていた。
「…いや、俺の彼女は可愛いなーって思って」
「かっ?!」
可愛くねーよ!と言って、照れながら向こう側を向くヒメ。
そういう、強くて痛くて、“唐辛子”みたいな面も、俺はだいすきだ。