綿菓子と唐辛子


「そ、そうなんですね!ごめんなさい相坂先輩。私、憶測だけで言っちゃったし、気にしないでください…!」

「…」


環の言葉に、コクリと、ヒメは頷いた。


「ほら、ヒメ。もう座れよ。落ち着いて食え」

「…分かってる」


顔色は変わらない。表情も変わらない。また、小動物のように料理を食べるヒメに戻っていった。




・・・


ーーそれから、1時間後。

今日の部活と、ヒメの料理部体験が終了した。


帰り道、俺は初めてヒメと2人で帰った。
真っ暗な夜道を、ヒメを庇うように寄り添って歩く。

さっきのことで落ち込んでいるのか、それとも疲れているのか、トボトボ歩くヒメが気になって足を止めた。


「…ヒメ、」


腕を掴んで、止まる。急に触って怒られるかな、と思ったけど、大丈夫だった。


「…ヒメ、あの…」

「ヒメって呼ぶな…!」

「……えっ?」



突然の大声に、身体が跳ね上がる。どうしたんだ、突然吠えたりして。

でも、よく見たら、手がふるえてる。

くちびるを噛みしめて、頬が濡れていた。




えっ!? 泣いてる……っ?

え、え、え。なんで!?


「…ヒメ!?あの…」

「ヒメって呼ぶな!!気持ち悪い!!うちは男だ!女なんかじゃない!女じゃない!かわいい、お姫様じゃないんだよ…!」

「……っ」





……ヒメ…………?






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