綿菓子と唐辛子
…どう、したんだ。
どうしてそんなに、"女の子"を否定するんだ。
色々な人がいる世の中で、そう思われるのが嫌だと感じる人もいることを、俺は知っている。
でも。
確かに言葉使いとか、ゴジラシャーペンとか、そんなものに女の子らしさはないけど。
みんなみたいに、短いスカートも。
ネクタイとリボンを選べるところで、リボンを付けることも。
髪がキレイなところも、鞄にはシュシュがつけてあることも。
…俺は、みんな知ってるから。
だから、"ヒメ"って、呼んでるんだけどな。
「…ヒメは、ヒメだよ」
「…!」
「俺から見たら、ヒメって人間は変わらない。おまえが何に怯えてんのか知らないけど、俺はそう思ってるよ。ヒメはヒメだよ」
「……っ」
何か言いたげな、だけど言葉を詰まらせていたらしいヒメは、そのまま黙ってしまった。
「行こう、ヒメ。家まで送るよ」
静かに、肩を叩いた。
「…1人で帰れるっ」
「だめ。女の子でしょ」
「…」
今度は、女の子と言われることに対して反応はしなかった。
…そして、ヒメが、指差すほうに、歩いていく、夜道の中。
ビックリしたことに、ヒメの家は俺の家の近くらしい。
新しいアパートが立ち並ぶ中を、ぐんぐん進んで行った。