綿菓子と唐辛子


「ナツーーー!!!」


ドアを開けたとたん、飛び出してくる大声。


「わー!!お、お前なんだその格好は!!」


見たこともない格好で、風呂場から飛び出して来るヒメに、大きく心臓が跳ね上がる。



「たっ…助けて…!ゴ、ゴキブリが…っ」

「…は?!ゴキブリ?!」

「うわーーん!まだ引っ越して来たばっかりなのにー!ぎもぢわるいーー!!」



……あーあぁ。

こりゃ耳の鼓膜いっちゃったな。


…つーか、その前になんなんだよ、この状況。

はっと気がついたら、ここは風呂場。目の前で騒いでるヒメは、ブラとパンツだけで俺にしがみついている。

…どうすりゃ、いーんだ。ていうかなんだこの展開は!少年誌のちょっとエロい漫画じゃねーんだよ!やめてくれよ!!


つーかその前に、ゴキブリはどこだよ……。



「あ、あのな、ヒメ。ちょっと向こう行っててよ。退治してやるから……」

「わ、分かった…っ。ちゃんと抹殺してね?」

「お、おう。抹殺、するから…」



頼むから、下着でしがみつくのはやめて欲しい。そしてそんな恐ろしい言葉を使うのもやめてほしい。


…こんなこと考えてんの、バレたら殺されるな。つーか、俺もヒメに反応してんなよ、情けねー。



「おーい、ゴキさん。どこいったんだよ、…あ、見つけた」



あらゆる家具や置物をどかすと、洗濯機の後ろに、黒くテカテカしたものが。

つーか、そんな叫ぶほどデカくねーじゃん…。


ま、可愛くはないけどさ。





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