綿菓子と唐辛子


シューッと、持っていたキンチョールを振りまくと、案の定すぐにお亡くなりになった。

死体を外に捨てると、震えながらリビングに避難したヒメの元へ急ぐ。


「ヒメー、ゴキブリ退治し…」

「ナツーーー!!!あ、ありがとうう~…」

「おわっ?!」


ガバッ!と、首の後ろに手を回されて抱きつかれた。

バクバクと、心臓が動き出す。


…つーか、下着……っ。む、胸当たってるんだよこの女……!!

つーか寒くねーのかよ…!!早く着替えてくれよ頼むから…!!なんでまだそんな格好でいるんだよ!!



「ナツ、ありがとう!ゴキブリ、本当ダメで。でもナツが来てくれたから、良かった!!」

「…っ!」



…………。



「わたしね…、お母さんが喘息で、でも訳あってわたしだけ、ここまで来なくちゃいけなかったから…このアパートに一人暮らししてるの。でも、虫と雷は本当に無理で。だから、その…、ナツが隣にいるって分かった時は、すごく安心した………」



……………。



「…あれ、ナツ…?」

「…あ、あぁ…。つーかお前…、話し方……」

「………!////」


スルリ…と、腕がほどけたヒメは、真っ赤になりながら口を抑えた。

いつも吊り上げられていた眉は下がり、くちびるは噛みしめて恥ずかしそうにしている。


「…ヒメ、」

「な…っ、なんでもない!!さっきのは…あれだ!昨日のサスペンスドラマのセリフのマネで…!」

「なんで昨日のサスペンスドラマにそんなセリフが出てくんだよ。つーか、今それ言うんか」

「…っ」


うわ。またさらに赤くなった。





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