綿菓子と唐辛子
――… 放課後、部活もなく、なんとなく帰る気が起きなくて教室に一人残っていた。
5月の夕方の風は気持ちいい。
涼しいような、温かいような、爽やかな風が頬を拭ってくれる。
そんな中で、1人でボーっとするのが好きだった。
「…」
ヒメがくれた四つ葉のクローバー。半分、しおれかけていた。そりゃあ昼間にくれたものを今まで握りしめていれば、こうなるのも当然か。
…どうすればいいのか。
押し花にする、なんてしゃれた考えは持ち合わせていないのが男子。
ま、こんなもんだよ、男なんて。
「…くそ、枯らしたくねーな……」
帰ってビンかなんかに入れとけば生き返るかな。なんてバカな考えにたどり着く。
しなしなになった緑色の愛しいクローバーを、そのままポケットに突っ込む。
…突っ込もうとした、その時。
「あ――――!!」
しんとした教室に割れ目が入るようにその声は響いた。