綿菓子と唐辛子
声の主の方に目を向けてみると、そこには驚いた顔でこちらを見ている南の姿が。
「ちょっとナツ!ひどいよ、ヒメが頑張って見つけたクローバーなのに!!」
「げっ、南…」
「げってなによ、げって。あんたね、押し花にするって考えはないわけ!?ほんっと女の子が傷つくことしか出来ないんだから男って!!」
「は、はぁ…」
無理やり取り上げられた俺のクローバーは、南の手によって丁寧に包まれた。
それを持っていたティッシュで包んで、辞書の中に挟む。
「…こうするとね、中に含まれてる水分がなくなって、綺麗なまま残るんだよ」
「へぇ…」
「あのままあんたのポケットに入ってたら、枯れてパサパサになるか洗濯機行きだったわね。そのまえに、四つ葉なのに葉っぱが取れちゃってたかもしれないわ!」
パンッと辞書をたたんで、俺に渡してくれた。
この中で、ヒメからもらったクローバーは生き続けるらしい。
良かった…。枯らさなくて済みそうだ。
「…ナツ、帰らないの?」
「ん…。何となく、まだここにいたくて」
「ふーん……」
南も、隣に座った。
涼しい風。まだ、肌寒いくらいだ。