綿菓子と唐辛子
「ヒメはいったい何をそんな謙遜してんだ?」
…なにか、あったのだろうか、今までに。
女の子であることを否定されることが、あったのだろうか。『らしくない』と言わなきゃいけなくなるような理由が、あるのだろうか。
「…それは、わたしも聞いたことないから分からないけど。少し気にはなるよね」
「…ん」
「ま、でも、時がたてば、あの子から話してくれるんじゃない」
「…」
そういう、ものなのかな。
未だに、大盛りの弁当は変わらない。ゴジラのシャーペンだって変わらない。男勝りな口調だって。
だけど、それが自分なんだって、そう思っているわけでもなさそうだ。
…だからか、こんなに引っかかるのは。
「…俺、ヒメのこと、もっと知りたいよ。待ってるなんて、出来ない」
こんなに自制が効かなくなるような、焦るような、怖いような感覚は初めてだ。
こんな気持ちは、今まで知らなかった。