綿菓子と唐辛子
「…、ナツ、ヒメのこと、ほんとに好きなの…?」
「……っ、そ、…」
南が、あまりにも普通のトーンで聞いてきたから。体にビクッと、力が入った。
…そういう、わけだけれど……。好き、なんだろうけど…。自分でも、分かってるけど…。たぶん。
それでも、素直にうんと言えない。答えられない。恥ずかしすぎて。
「…好きなら、ナツが引き出してやればいいよ。時間はかかるかも知れないけど…。ナツが、ヒメを笑顔にしてやればいいよ」
「…っ」
太陽が沈んだ。
下校の放送が鳴りはじめる。
南の顔は見えなかった。ただ、横顔だけがはっきりとかたどられていた。
「あーぁ、真っ暗になっちゃうなー。ナツ、早く帰ろうよ、警備員さん来ちゃう」
「…あぁ…」
…俺が、笑顔に…。
出来るかな、ヒメ。
俺のために、笑ってよって言ったら、笑ってくれるかな。
…なんて、そんなの、ただの自惚れなのにな。
それでも、俺はお前を笑わせたいって、思ったんだよ。