プラチナブルーの夏
10.
大きくてかたい手は、少し汗ばんでいた。
今でもその感触や、あの時の嫌悪感を思い出すと、あたしはたまらずに叫びだしたくなる。
同時に決まって思い出すのは、リツコのあの、イタズラっぽい笑顔。
もう二度とあたしに向けられる事のない表情ばかり思い出す。
あたしは甘く、ちょろい夢ばかりを見て、いつだってただ一人立ち尽くす事しか出来ない。
叶いっこない夢ばかりを見て。
父親の後ろ姿をただ黙って見届けた、あの夏のように。
いつまで経ってもあの、子供の頃のままに。