プラチナブルーの夏
「でも…どんなに遠くに行っても、結局は

ずっとあの場所にいるんだよな」

「………」

「自分自身からは、どうしたって逃れられないんだって、

色んな土地に移動しまくって色んな人と会って、

色んな仕事して…生活し続けたあげくにやっと気づいたよ。」

「…うん…」

「俺マジでアホだから、それに気づくまで3年以上かかったけどな」
 
トモロウはそう言って、くわえかけた煙草を箱の中に戻した。

住処へと戻る道のり、トモロウのシャツの

腰の辺りを掴んでその広い背中ばかりを見ていた。

行きとは違う、どちらかと言えば遅い速度で

チャリを走らせていた。
 

ひぐらしが泣く。蝉も泣く。川沿いの道。
 
あたしの頬にも流星が、氷の欠片のように一粒こぼれる。
 
…どんなにか、つらかった事だろう。
 
想像の域を超える事は決してかなわないトモロウの体験。
 
あふれだして止まらない想いを全て詰め込んで、

あたしは黙ってトモロウの背中に耳を当て、

腰に両腕を巻きつけた。
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