プラチナブルーの夏
「…スレんなよ、ミズキ」
……え?
「…何に対して?」
僅かにすき間が出来る唇と唇。
そのすき間から、あたしは尋ねた。
「…人生で起こるすべての出来事に対して。
人生で出会うすべての人に対して。
…いゃー俺っていい事言うよなぁ」
またそうやって、ふざけてみせる。
憎たらしくて愛し過ぎるその顔と体に、
さっきからずっとあたしの影が重なっている。
「あのさ、病院にいたのって、お母さんなん
だよな?」
トモロウはそう言いながらあたしの背中を
片手で引きよせた。
重なっていたあたしの影は、本物の体温と鼓動と厚みに
姿を変え、本物の体温と鼓動とその厚みに抱きしめられた。
「……うん……そうだよ」
ーーやっぱり、あたしはあの女を母親だなんて認めたくはない。
あの女との関係を口に出す時は、どうしてもためらってしまう。
「どうして喧嘩したの?どんな人なの?」
「……………」
トモロウに出会う以前の記憶を蘇らせるのは
正直ものすごく怖かった。
けれども、その反面あたしはその記憶を全て
誰かに聞いて欲しいとずっと願っていたような気もした。
トモロウの髪をなでて、トモロウに髪をなでられて。
真っ暗闇の螺旋階段を、一段一段確かめながら降りていくように、
少しずつあたしは記憶を辿って行った。
……え?
「…何に対して?」
僅かにすき間が出来る唇と唇。
そのすき間から、あたしは尋ねた。
「…人生で起こるすべての出来事に対して。
人生で出会うすべての人に対して。
…いゃー俺っていい事言うよなぁ」
またそうやって、ふざけてみせる。
憎たらしくて愛し過ぎるその顔と体に、
さっきからずっとあたしの影が重なっている。
「あのさ、病院にいたのって、お母さんなん
だよな?」
トモロウはそう言いながらあたしの背中を
片手で引きよせた。
重なっていたあたしの影は、本物の体温と鼓動と厚みに
姿を変え、本物の体温と鼓動とその厚みに抱きしめられた。
「……うん……そうだよ」
ーーやっぱり、あたしはあの女を母親だなんて認めたくはない。
あの女との関係を口に出す時は、どうしてもためらってしまう。
「どうして喧嘩したの?どんな人なの?」
「……………」
トモロウに出会う以前の記憶を蘇らせるのは
正直ものすごく怖かった。
けれども、その反面あたしはその記憶を全て
誰かに聞いて欲しいとずっと願っていたような気もした。
トモロウの髪をなでて、トモロウに髪をなでられて。
真っ暗闇の螺旋階段を、一段一段確かめながら降りていくように、
少しずつあたしは記憶を辿って行った。