プラチナブルーの夏
22.
それはもう、遠い遠い過去の話から。
 
父親の背を見送った、あの夏。

親友を失った、あの夏。
 
なにもかもどうでもいいと、やけになって

家を飛び出したあの日。
 
そして、子供の頃からずっとあたしに悲しみばかりを

連れて来たこの大きな胸が大嫌いだという事もーーー。
 
話している途中、何度も涙がこぼれた。
 
それを温かい手と指を使って、トモロウは拭い続けてくれた。

「…そんだけの事、乗り越えて来たんだろ。

これからはきっとその全部の経験がいい方向に

ミズキを連れて行ってくれるよ」

「………ほんとに………?」
 

ほんとに?
 
ほんとに?
 

ほんとに?-------


「うん。大丈夫だよ」
 

…こんなふうに。
 

誰かにあたしを肯定して欲しかった。
 
欲しくて欲しくて、たまらなかったのに、

誰からも手を差し伸べてはもらえなかった。

だから…
 
世界中の誰一人、あたしを肯定してはくれないんだと

ずっと思い込んでいた。
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