プラチナブルーの夏
棒アイスが食べ途中に溶け落ちてしまい、泣き出した子の声がする。

「仕方がないでしょう?」

泣きじゃくるその子を、母親らしき人が優しくなだめている。

『仕方がないでしょう?』
 
本当に、その通りだ。
 
眩し過ぎる日差しや時折吹く生ぬるい風は、誰に対しても平等に降り注ぎ、また、吹き抜けていくものだけれど。
 
目の前にいる子供達と平等に、その数だけの母親の愛情は、誰の上にも降り注ぐものだとは限らない。
 
汗が目の中に入り、ツンとしみるように痛い。

ハンドタオルで目を押さえながら、もうぬるま湯のようになってしまったお茶を、一気に飲み干した。
 

ちらほらと、公園から親子達の姿が消えていく。
 
携帯を開くと、既に時間は夕方の四時過ぎだった。

(…リストラされたのを家族に打ち明けられないまま時間つぶしをしてるオジさんみたいだな…)
 
あたしはそうココロの中でひっそりと呟き、小さな声で笑った。
 
その時。
 
俯いていたあたしの足元に、汚れた茶色い靴を履いた男の足が見えた。

驚いて見上げると、そこには知らない垂れ目のオジさんが、あたしを見ながらニタニタと笑いかけていた。
 
気がつけば、つい先ほどまで大勢いた親子達の姿は一つもなく、

あたしとそのオジさんだけが、死んだように静まり返った公園内で二人きりになっていた。
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