プラチナブルーの夏
「お嬢ちゃん、可愛いねぇ~…」
 
垂れ目の目尻をさらにだらしなくデレリと下げながら、オジさんはまたニタニタと笑った。
 
ボロボロで小汚い作業服のようなものを着ている。

その上そのカラダ中から、かなりの悪臭を漂わせている。
 
「うぃ~。よっこらしょっと」
 
呑気な声を出して、突然ソイツはあたしの隣りに腰かけて来た。

入れ替わるようにして慌ててあたしが立ち上がると

「アレ?お嬢ちゃん、もう帰っちゃうの?」
 
つれないねぇ、とかなんとか呟きながら、突然あたしの腕を真っ黒な泥がびっしり詰まった爪の手で、力いっぱい握り締めて来た。

(………ヤバい!!マジでヤバい!!早く逃げなきゃ!!!)
 
頭ではそれを十分理解していたけれど、あたしの足は恐怖のあまりにカタカタと震え、一ミリも動かなかった。
 
怯えているあたしを見上げながら、ソイツは初めてパックリと口を開けて笑った。

前歯が二本抜けている、間の抜けた笑顔。

「ほんとにアンタ可愛いねぇ…オッパイも大きいし…エッチなカラダだねぇお嬢ちゃ…ブッ!!!」
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