プラチナブルーの夏
「リツコ…ありがとう」
 
瞬きをしたらまた一筋、汗のようにツルリと頬を、涙が伝い落ちた。

「そんなんえーって。とりあえず、早よこっちおいでや」
 
さっきまでよりも幾分明るい声でリツコが言った。

「うん。わかった」
 
静かに通話を切り、携帯を胸に押し当てて抱きしめた。

(やっぱりあたしが信頼出来る人は、リツコ以外にはいない……)
 
もうこれで何度目だろう?あたしはココロの中でそう噛みしめながら立ち上がり、再び夕暮れの町を全速力で駆け抜けていった。
 

すっかり通い慣れた、細く入りくんだ坂道の上。

リツコの住んでいる部屋の窓からこぼれる灯りを見つめながら、あたしはしばらく立ち止まり呼吸を整えた。
 
夕暮れと夕闇がダンスを踊る、ほんの僅かの儚い時刻。
 
もちろんリツコのいる部屋以外の窓からも、優しい灯りがこぼれてはいるけれど、

あたしの目にはリツコの部屋の灯りが、一番柔らかく優しく、ピカピカと輝いているように映った。
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