プラチナブルーの夏
高校生になって初めての夏休みが来た。
 
あたしはますます精力的にバイトに励み、

宿題をする時は近所のネカフェに行き、

出来るだけ母親にもクラスメートにも会わずに済むように生活していた。
 

そんなある日。
 
その日もバイトを終えて家に帰ると、母親はいつも通り出勤した後だった。

あたしはホッと息をつき、部屋の床にゴロリと横たわった。
 

不思議と静かな夜だった。

いつもと同じ部屋、いつもと同じ空気。それなのに、どこか落ち着かない。

妙な違和感を感じながらも服を脱いで着替えてしまうと、あたしはそのま
ま眠ってしまったらしい。


と、突然けたたましく携帯が鳴った。

咄嗟に手を伸ばし着信先を見ると『クレージュ』とあった。
 
母親が勤めているスナックからだ。

「あっ、ミズキちゃん?ごめんなさいね、こんな時間に」
 
お店のママさんの声だった。あたしは壁時計を見上げた。

眠っていたのはほんのわずかな間だと思っていたら、時間はもう深夜二時
を回っていた。

「落ち着いて聞いてね。大丈夫だから、今はもう大丈夫だからね」

「…?何がですか?」
 
自分の方こそ落ち着いていないママさんにあたしは静かに尋ねた。

ママさんはこくりと息を飲んだ後

「お母さんが、倒れたのよ。今、藤岡病院にいるわ」
 
少し上ずったような声で言った。
 
今度はあたしが息を飲む番だった。
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