プラチナブルーの夏
翌日、午後になってからチャリで藤岡病院に向かった。

病院の建物はまるで、ばかでかい棺桶のように見えた。
 
ナースステーションに声をかけ、母親の病室に着くと

彼女はベッドに横たわったまま

「遅かったじゃない。何してたのよ」
 
看護師がいるのも構わず、いつもと同じように不機嫌な目をしてあたしを見た。

「……バイトが、あったから」

「そんなの一日くらい休めるでしょ?心配じゃなかったの?お母さんのこと」

「………」
 
いっそのこと、来なければ良かった。あんなにドキドキして、ばかみたいだ。
 
あたしは、母親のために持ってきたものが入っている袋を彼女に投げつけ、

足元のスリッパに目を落としたまま、さっと病室を出た。
 

外はまだ、はしゃいだ真夏の薄青さで、纏わりつくようなぬるい空気が

いつもよりも鬱陶しく感じた。
 
だるい…。
 
重苦しい身体にムチを打ってチャリに乗り、病院のすぐそばにある信号が変

わるのを待った。
 

と、その時。
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