プラチナブルーの夏
その日はバイトがいつもよりもっと楽しかったし、忙しかった。

店長と奥さんと三人で早回しのテープみたいに働いた。

閉店まであっという間だった。

「疲れたでしょう?ミズキちゃん」

「今日はこれ食って帰れ。気をつけてな」
 
店長が作るスパゲティーはめちゃくちゃおいしい(て、言うかなんでもおいしいけど)

それからセットのサラダと飲み物まで、全部サービスしてくれた。
 
普段は飲み物だけ頂いて帰るのだが、お言葉に甘えてゆっくり食事をして、

店長と奥さんと喋ってから帰った。
 
そう。たったそれだけだ。
 
その日のあたしはカナと会ったことが、心の奥底で本当は少しだけ、嬉しか

ったのかも知れない。
 
だから、ほどよい疲れと心地のいいパウダーのような夜風に誘われるように、

鏡川沿いを帰り道に選んだのかも知れない。
 
普段はあまり通らない道だけれど、まだそれほど暗くはなっていなかったし

チャリに乗っていたし機嫌も良かった。ああ、だけど。
 
そんなことはなんの理由にもならないのだろうか?
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