プラチナブルーの夏
さらさらと草がなびく音と、ペダルを漕ぐ音、遠いサイレン。

ぼうっとそれらに耳を囚われながらチャリをゆっくり走らせていたら、前方

に人影が見えた。 
 
…あたしのチャリの、呑気な速度がいけなかったのだろうか?
 
それともやっぱりこの大きく膨れた胸が…?
 

チャリのライトにくっきりと照らされる距離に入ったかと思ったら

その人影は突然、あたしを目掛けてダッシュして来た。


(危ない!!ぶつかる!!!)
 

とっさにブレーキを握った瞬間。
 

ダッシュして来たその男は、あたしの首に腕を絡ませ、ものすごい勢いで


エルボー

 
を、喰らわせてきた。


『ガシャンッ!!!』

 
あたしとチャリが、砂利道に倒れる。


(痛い!!!)

 
後頭部をしたたかに打ったあたしの上に、覆い被さって来たその男は。
 
仰向けのあたしに馬乗りになって、両胸を思いっきりグッ!!と鷲づかんだ。

「痛いっ!!痛ーーーーーい!!!」
 
あまりの痛みにあたしは、涙を滲ませながら叫んだ。

そして、自由な両手を闇雲に動かしながら、男の顔に爪を立て、頭を打ち、

張り手を喰らわせ、必死で抵抗を試みた。
 

しかし、そんな事は一切意に介さず。
 
男はただただ無言で、なおもあたしの胸をグッ!!グッ!!と力いっぱい揉みしだき続けた。

それはまるで、憎しみの塊を握り潰してやろうとしているかのようだった。


「やめて!!やめて!!やだーーーーーーーーーーー!!!!誰か助けてーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 

痛みにもがき、髪を振り乱して、あたしはあらん限りの声でもう一度叫んだ。
 
その時。
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