プラチナブルーの夏
蹴られた左顔面が腫れているのと、左目がかすんで見える事、

それから鼻血が出ている事しか自分ではわからない。

「……ひでぇ……ボクサーみたいになってる………」
 
ボクサー………?

「…それ、顔の形が変わるくらい腫れてるって意味…?」
 
トモロウはあたしの言葉に何も答えず、

「警察呼んだ方がいいよな…あ、骨折とかしてたらまずいし救急車も…」

「いいです。呼ばないでください」
 
今度はあたしがトモロウの言葉を遮るように答えた。
 
警察や病院なんかに知られたら、母親にまで話が行くに決まってる。

そしてまた全てあたしのせいになるに決まってる。

「……ん、わかった。じゃあ、とりあえずその顔早く冷やさないと!!

もう、立ち上がれる?歩ける?…えーっと…えー……」

「立てます。…あたし、ミズキです」
 
相変わらずのワンコの笑顔で優しくほほえんだ、トモロウ。

ずっと向こうまで飛んでいったあたしのバッグを拾い上げて

「ミズキちゃん。無理そうなら、俺におぶさってもいいよ」

「いえ…大丈夫です。ちょっとフラフラしてるだけなんで…」

「じゃあ手!危ないから、手ぇつなごう!」
 
今度は返事を待たずに、トモロウはフラリと立ち上がったあたしの右手をギュッとつないだ。
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