アドラーキャット


新入生を勧誘した日から数日後。

またあの子に会った。

「あ‼」

「……。」


猫背で、喋んない荻野目くん。

男子バレー部の見学に来てるのは遠目にチラッと見てはいたが、まさか学校の自販機の所で会えるとは思わなかった。
学校の自販機って安くて便利だしね。


荻野目くんは一人で買いにきたみたいだ。
とりあえず、先輩としてここは何か話しかけるべきだろう。

「ねぇ何買うのー?」

「……。」

うっわすごい嫌そうな顔された。
長い前髪の間から見える猫目が細められた。

「ねぇ、ここのミルクティーめっちゃ美味しいから飲んでみなよ‼」

私のオススメを推す。
いつもこの自販機ではミルクティーしか買わないくらいここのミルクティーは美味しいのだ。

「……。」

また一層嫌そうな顔をされた。
うん、もう、慣れたよ荻野目くんの無口具合と懐かなさには。
慣れって大事だよね嫌そうに見られてももう傷つきもしない。

「あ、じゃあ奢るから‼」

「……。」

チャリン、と百円玉を自販機に入れる。
ボタンを押せばウィーンという機会音とともにミルクティーが運ばれてくる。

「ほら、ぐいっとぐいっと‼」

ミルクティーを押し付けたらすごく嫌そうに押し返された。
ここで引くのはなんか悔しいので私も意地になって押し付ける。

「ほらほら騙されたと思って‼荻野目くんのちょーっといいとこ見てみたい!!!!」


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