アドラーキャット
大学から帰ってきたら、何故か家まで荻野目くんが着いてきた。
私よりも早く講義が終わっていたのか、買い物袋を提げていた。
中には、たくさんの野菜と肉が入っている。
「荻野目くん、それなに?」
「食糧。」
いや、それは知ってる。
「みずき、今日のご飯、ラザニアにしよう。」
「別にいいけど、私そんなオシャレなの作れないよ。」
「だいじょうぶ。俺、作れる。」
私が作れないものを荻野目くんが作れるなんてそんな馬鹿な。
荻野目くんの一言で家庭科とか女子力とか色々と敗北気分を味わった。
レストランなどでラザニアを食べたことはある。
それらと比べても荻野目くん手製のラザニアはなかなか美味しかった。
「荻野目くん、家庭科得意だった?」
「べつに、ふつう。」
カチャカチャと食器を洗いながらそんな会話をしていた。
……てか、荻野目くんいつ帰るんだろう。
いや別に早く帰れってわけじゃないんだけどね、荻野目くんご飯作ってくれるし一緒に居づらいわけじゃないから別に全然構わないんだけど。
ご飯の片付けも済んで、私は来週提出のレポートの作成に取りかかる。
荻野目くんは本を読んでいる。
ブックカバーがかけられていてなんの本かは分からない。