アドラーキャット
ばさ、と蛍光灯の光が見えなくなる。
逆光から荻野目くんの顔が見えて、荻野目くんに覆いかぶさられているんだ、とようやく気づいた。
「お、荻野目くん!?」
逆光だからよく見えない。
ても、荻野目くんの眉が寄っていることはわかった。
その、目元がほのかに赤いのも。
「みずきは、ペットみたいにしか思ってないかもしれないけど、」
俺は、ずっとすきだった。
その言葉を荻野目くんが言ったかどうかは定かではない。
触れた唇の感触と温度に、頭がぼうっとする。
触れたのは一瞬で、次にはもう真っ赤な顔の荻野目くんが見えた。
クリクリとした猫目がこちらを熱を含んで見つめている。
ゆっくりと瞼を閉じもう一度、こちらに顔を近づけてくる。
ほぼ、反射的に、パンッと一回手拍子した。
「はいっ!!ペットはこんなことしません!!」
顔が赤いのが自分でも分かる。
「……。」
「はいそんな小動物みたいに可愛く上目遣いしてもダメ!!」
ぐっと荻野目くんの肩を押し、身体を離す。
「みずきも流されてたくせに……。」
「黙れ未成年!!」
未だにドキドキバクバクとうるさい心臓は、私にとって予想外すぎた。
まさか、荻野目くんを、んな、馬鹿な。