アドラーキャット



女子高生は傷つくことを恐れない。
女子高生はだから強いのだ。
そして、可愛いのだ。


高校二年、青春まっさかりのゆるふわ系女子こと私、瑞希でっす!!

あ、はい、嘘です。

全然ゆるふわ系なんかじゃないです。
いつでも赤点ギリギリ回避系女子です。
ホントに私勉強頑張らなきゃなぁ、とぼんやりと思った。


勉強も心の片隅の不安の種ではあるが、今はそれよりも気になっていることがある。

今日も今日とて、廊下を歩いていたら見つけた、あの黒猫荻野目くん。


「荻野目くんこんにちは‼仮入部期間今日で終わりだよ‼」

「……。」

女子高生は強いのだ。
何も言ってもらえなくて傷つくほど弱くはない。
うん、別に、全然気にしてないし。

「ねぇねぇ、荻野目くんバレー部入るの!?」

「……。」

私が諦めずにしつこく話していれば、段々荻野目くんの顔が嫌そうになってくる。
この子はいつになったら懐いてくれるんだろうなぁ。
世に言うツンデレの、デレの部分が全く見えない。

「あ、瑞希先輩また来たんですか?」

「えへへ、一年生いじるの楽しくて。」

会話をする気ゼロの荻野目くんの代わりに話してくれたのは一年生の祐介くんだ。
彼は荻野目くんの幼馴染らしく、荻野目くんが話せる数少ない人だ。
荻野目くんと違って人当たりが良く、見た目が怖いのにその優しさとのギャップでなかなか女子から人気がある。

というか、女子バレー部はリア充率0%なのに男子バレー部は女子に人気ってどういうことだ。
ただ、残念なことに荻野目くんは持ち前の人見知りと猫背を活用して女子に目をつけられることがない。

よくよく見れば美人さんなのにもったいない。
私だったら絶対活用する。
というか、モテるという体験をしてみたい。


「ねーねー荻野目くん何、今日弁当ないの!?」

「……。」

やはり嫌そうな顔をされた。

「そうなんですよ。今から購買行くところなんです。」

荻野目くんの代わりに祐介くんが答えてくれた。

「あ、じゃあ私も一緒に行っていい?」

「……やだ。」

「なんで荻野目くんはこーゆー時だけしゃべんの!?」




ツンデレっていうのはデレるまでの我慢の時間がなかなか楽しい。


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