アドラーキャット
なんだか今、無性に、荻野目くんのあのふんわりとした甘い匂いが恋しい。
「ねぇ、荻野目くん。」
そう言ってくいっと荻野目くんの袖を引っ張る。
びく、と反応した荻野目くん。
そこで警戒するところとか、本当に猫みたいだ。
口元が緩んでしまう。
カチリと、荻野目くんのクリクリした猫目と目が合う。
困ったように、困惑したように、荻野目くんがおどおどしている。
「みずき、誘ってるの?」
後輩を困らせるなんて、私もヒドイ先輩だなぁ、なんて思いながら。
それでも、仄かに赤い荻野目くんの顔を見るのはなかなか。
「うん、誘ってる。」
ガブリ、と。
我慢出来なかったような、噛み付くような荻野目くんのキスが降ってきた。