アドラーキャット
ていうか、結局荻野目くんは何がしたかったんだろう。
私のことが好きだとか言っておきながら、自分からやめるとか。
ぎゅうぎゅう抱きついてキスまでしてきたくせに、私からすれば逃げるとか。
ホント、なんなの。
あの荻野目くんのふんわりとした甘い匂いも、もうあんなにはっきりと感じることは出来なくなるだろう。
「みずき、どうしたの?」
荻野目くんの心配そうな顔が覗き込んできた。
慌てて後ずさり、そこでようやく私が荻野目くんの袖を緩く掴んでいることに気づいた。
「なん、でもない。」
下を向く。