アドラーキャット



今、ちょっと想像してしまった。
あと何ヶ月もしないうちに、荻野目くんは彼女を作って、私にしたみたいに彼女に抱きついている姿を。

前まではそれが当たり前だと思ってたし、普通に考えていたのに。

嫌だな、と思ってしまった。

「え、ちょ、みずき、泣かないで。」

荻野目くんのわたわたとした様子に、あぁ、私泣いてるんだな、と思った。
頬を伝う涙にもようやく気づいた。

カッコ悪いなぁ、止めなきゃなぁ、と思っても、涙はボタボタと落ちてくる。

「みずき、どうしたの?」

あたふたしている荻野目くんの問いには答えず、彼の背中に手を回す。
なんでもいいから、抱きしめて欲しかった。

なんか、ようやく、っていうか今更だけど、私、好きだったんだな。
いつからだったんだろう。


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