アドラーキャット
ビクッとして、荻野目くんは止まった。
恐る恐る、困ったように私を見降ろしてくる。
「みずき、そーゆーの、やめなよ。」
「……なんで。」
自分で思ってた以上に涙声だった。
「だから、そーゆーの、誘ってくるの。」
好きでもない人にそんなことされても辛い、だとか。
そんな言葉が来る気がした。
「期待、させないで。」
あぁ、やっぱり。
私は緩く息を吐く。
ここで終わりかと思ったけど、荻野目くんはさらに言葉をつないだ。
「俺も、男だから、好きな子が誘ってきてくれるのはすっごく嬉しいけど、多分、とまんないから。」
そう言って、私をぐいっと押して体を離し荻野目くんははにかんだ。
悲しそうに。