アドラーキャット
「みずき先輩、荻野目くんって、目立たないけどかっこいいですよね。」
危うく飲んでいた飲むヨーグルトを吹きそうになった。
突然私の彼氏をかっこいいと評価したのは同じ和歌サークルに入っている後輩、佳乃子ちゃん。
これがまた細くて美しくて頭いい子、つまり憧れの的なわけで。
モテモテなのだ。
モテモテというのが死語かどうかは分からないが、とりあえず、和歌サークルでも佳乃子ちゃんを狙っている男子は多い。
そんな美女佳乃子ちゃんが付き合うのはどんなに男前かと佳乃子ちゃんが彼氏を作る日を楽しみにしてたのにまさかまさか。
いやでもかっこいいと言っただけでまだ好きとは決まってない。
落ち着け瑞希、無心で素数を数えるんだ。
「もうすぐバレンタインじゃないですか。」
「え、あぁ、うん、だね。」
31まで数えていたのでなんとも歯切れの悪い返事をしてしまった。
悪い予感というのは、当たるものなのだろうか。
「私、バレンタインに荻野目くんに告白するつもりです。」
「…………か、佳乃子ちゃんさ、あのね、」
「なんですか?」
きょとんとこちらを見つめてくる佳乃子ちゃん。
黒髪が風になびいて美しい。
まさに天女。
いやそんなこと考えている場合じゃなく、ここは荻野目くんは私の彼氏なのだと言った方がいいだろう。
てか言わなきゃダメだろう。
「みずき先輩、顔青いですよ、大丈夫ですか?」
「え、あ、うん、大丈夫。」