SAMURAI PLUM
超高層ビル群を茜色に染める夕暮れ。
屋上には搬送用車両が停まり、班員がAndroidの回収、清掃・修繕作業に動いている。
指揮を取る男は、白地(縦縞)の着物を黒帯で締め、刀を二本帯刀している。
眠気眼。あひる口唇。白い肌。襟足が長い橙色の髪に、骸柄のニット帽(黒)を被る男。
SAMURAI【執行部】。
柿沢 荘助(かきざわ そうすけ)。
「搬送班でもねえのに、物好きなお人だぜ」
「烏間さんの現場には必ずと言って同行するのさ。見えるんだと。烏間さんの“影"ってのがな」
「特異体質者(もののふ)の“力"ってやつか」
「いいや、それが違うって話だ。残り香みてえなもんらしい」
「まるで獣だな」と班員が溢す間も、顎先に指を添え“何か"を見続ける柿沢。
柿沢の目には、ここでの一部始終が靄(もや)となって見えている。
班員が言うように、それは特異体質者(もののふ)の能力などではなく、言わばただの想像。
だが紛れもない事実でもある。
「相変わらず優しいんだから、蓮次さんは」
瞼(まぶた)を閉じ、柿沢は口端を曲げた。
そして屋上で一人佇む黒崎の元に歩を進める。
「やあ、君が新人さんだね。俺は柿沢荘助。よろしく」
「あ、本日付でSAMURAI【執行部】に配属となりました。黒崎楓です。よろしくお願い致します」
「はは、堅いなあ」
後頭部を掻きながら、屋上に捨てられたモッズコート(鼠色)を見る。
血痕(※E2)が付着したコート。
「大変だったね」
「いえ、私は何も」
「誤解しないで欲しいんだ。蓮次さん…───烏間さんはさ、あ、いや、俺が話す事じゃないか」
言いながら柿沢は携帯端末を触る。
すると黒崎の腕時計から、ある情報が投影される。
「J-STAGE総合病院…?」
「そこに行ってごらん」