SAMURAI PLUM
「ああ、これ」
表情を伺ってか、あるはずの下半身を擦り苦笑する。
口角に添えた笑窪(えくぼ)。睫毛の隙間から瞳が揺れる。
そして沙耶は、携帯端末から検索した物を投影させた。
『DIO(ディオ)。ピューリッツ所属のアイドルグループ。2233年結成。LISA・SAYA・MIKI・ALISA・HALUの五人で構成され、その秀逸した歌・ダンス・パフォーマンスに注目を浴びている…───』
投影される映像・音声。
それに映る人物を見て、黒崎は思わず口を開く。
「この真ん中の人って…───」
「うん。私ね、半年前まではアイドルだったんだ」
そう自嘲気味に笑う沙耶。
「一日中、歌って踊って。搾れるくらい汗掻いて。命が燃焼してるって言うのかな。パフォーマンスしてる間だけは、生きてる…───って実感できてさ」
「………。」
「幸せだったな。段々LIVE会場が広くなって、お客さんも増えて。ここまで来たぞって。それで半年前、ついに【J-DOME】でのLIVEが決まったのね。観客動員数三万人。三万人だよ。私達のパフォーマンスを見に三万人が集まってくれるなんて、夢にも思わなくて」
布団を握る手に力が入る。
「夢の時間だった。まるで宝石箱の中で踊ってるみたいでさ。でも、それは夢だから、覚めちゃった」
「どういう、事…?」
「突然ステージにAndroidが上がってきてね。八体。会場は大混乱。そのAndroidさ、機関銃って言うのかな。ダダダダ…───!ってやつ、持ってたのね。でもすぐに回収屋が到着して、負傷者を一人も出さずにAndroidを制圧したの」
「もしかして、その中に烏間さんも…?」
小さく頷く沙耶。
「彼は混乱を最小限に抑えようとして、上司の命令を無視した。Androidを斬らなかったの」
「“SAMURAIは常に無情であれ"…───」
その言葉が黒崎自身にものしかかる。
「だけど一体のAndroidが“自我崩壊(バースト)"して…───」
「自我崩壊(バースト)…」
「咄嗟に彼が庇って、私は命を救われた。でも、足はもう動かなかった。仲間も失った。彼は何度も頭を下げた。俺の責任だ…───とか何とかってさ。蓮君のおかげで私は生きてるのにね」
黒崎は胸を掴み、自分の過ちに苦しむ。
(烏間さん…───)