SAMURAI PLUM
政府は“特異体質者(もののふ)"を第一級危惧種に指定し、居住区域・労働区域を限定する事で、常時監視体制に置いてきた。
その反面で特異体質者(もののふ)は、農産物・工業製品・天然物の支給や、配給が基本給与の2.3倍等、あらゆる面で待遇される。
それが抑止力となり、特異体質者(もののふ)の犯罪率は全体の7.9%。
波風なく暮らすには、何不自由ない環境の中、わざわざ過酷なSAMURAIを選ぶのは、余程の物好きと言えるだろう。
烏間然り、黒崎然り。
「───…戒め、ですかね」
「戒め、ねえ」
「あの、烏間さんはどうしてSAMURAIに…───」
そう問うた刹那。
『ご機嫌よう。どうやら合流できたみたいね』
突如、左耳のピアスから女の声が聞こえる。
「ああ」
『初めましてMs.黒崎。司令部責任者の高嶺 静(たかみね しずか)よ。よろしく』
「あ、はい、よろしくお願いします」
『さっそく対象の情報を転送するわ。見て頂戴』
腕時計を見ると、幾つかの画面が投影された。
『対象Androidは加藤 悠希(かとう ゆうき)…───』
製造年月日2215年8月15日。
身長169cm、体重57kg、製造元パルディック社。
製造記録、出荷記録、購入記録。
『あくまでも回収が最優先。無茶はしないで』
「もちろんだ。“色落ち(カラードロップ)"を頼む」
『了解』
次の瞬間、視界がモノクロに覆われた。