SAMURAI PLUM
“色落ち(カラードロップ)"…───。
開発部から支給されたコンタクトを媒体とし、視界がモノクロで覆われE2(エルマイム・エネルギー)だけが赤く映る現象。
これによりAndroidと人間とを容易に見分ける事ができる。
「っぷ…っ」
すると突然、黒崎が通りに蹲る。
色落ち(カラードロップ)により吐き気を催す、色酔いと言う症状だ。
「おいおい、大丈夫か」
「は、はい」
「研修じゃ色落ち(カラードロップ)は体験しないからな。仕方ないさ。いずれ慣れる」
「すみません。行けます」
呼吸を整え、着物の内側に装着されたショルダーホルスター(革製)に手を添える。
大丈夫…───。
二人が足を止めたのは一軒の雑居ビル。先程、烏間が眺めていたビルだ。
烏間はビル内の“ある"標識を見つけると、鍵束から鍵を一つ掴む。
標識の下は格納庫となっており、鍵穴を回すと、そこから一本の“刀"が姿を見せた。
支給刀…───。
政府から設置が義務付けされた刀。設置基準は建築物の種類・面積により異なる。
剥き出しになった刀を烏間が握る。
「あ、あの、どうして支給刀なんですか?近接型のSAMURAIは大半が愛刀を所持してると聞きました」
「───…その話はまたの機会に。楓ちゃんは階段から頼む」
「え、あ、はい」
この屋上に対象がいる…───。
黒崎はホルスターから銃をぬき、階段を昇ってゆく。
烏間は一階で停まるエレベーターを開くと、そこに消火器を寝かせた。
これでエレベーターは使えない。
「さあてと」