SAMURAI PLUM

E2(エルマイム・エネルギー)が乾いた毛先を揺らし、対象を監視する烏間。

穂先の灰が散り、丸縁のサングラスから覗く目には、憤りが灯っている。

手際良くAPO社のAndroidを血止め(※E2)し、鎮痛剤を射ち終えると、黒崎は烏間の元に歩を進める。


「あの、烏間さん、先程は…───」

「───…正しい判断だった」

「え」

「そう言って欲しいか」


抑揚のない声に、肩に力が入る。


「道徳的な判断。───…と言えば聞こえはいいが、危険要素を残したってだけの話だ」

「………。」

「回収屋を履き違えるな」

「…はい。すみませんでした」


すると突然、俯く黒崎の肩に腕を回し、烏間は対象のAndroidを指差した。

「見てみな」と言う声色はどこか悲しげで切ない。

対象を見ると、目玉がぐるりと白目を向き、機械的な口調で項垂れている。


『ガガ…ガッ…ガガガ』

「“自我崩壊(バースト)"。あれが違法Androidだ」

「そんな」


自我崩壊(バースト)…───。

他刺激調整機能、無意識的防衛機能の崩壊。これにより、Androidはただの兵器へと変貌する。

それがパルディック社製のAndroid。

それが“違法"と言われる由縁。


『ガ、ガッ…ガガガ…』


次の瞬間、対象は刺さった支給刀を抜き取り、高く跳躍した。

いまの加藤悠希にあるのは、破壊的衝動だけ。

そしてでたらめに握る刀を、烏間に振り降ろす。


「烏間さん…───」


白刃に対し、烏間は左足を軸に、後回し蹴りを見舞う。

刃と足裏が触れた瞬間、甲高い音と供に、何かが宙を舞った。

< 8 / 16 >

この作品をシェア

pagetop