SAMURAI PLUM
E2(エルマイム・エネルギー)が乾いた毛先を揺らし、対象を監視する烏間。
穂先の灰が散り、丸縁のサングラスから覗く目には、憤りが灯っている。
手際良くAPO社のAndroidを血止め(※E2)し、鎮痛剤を射ち終えると、黒崎は烏間の元に歩を進める。
「あの、烏間さん、先程は…───」
「───…正しい判断だった」
「え」
「そう言って欲しいか」
抑揚のない声に、肩に力が入る。
「道徳的な判断。───…と言えば聞こえはいいが、危険要素を残したってだけの話だ」
「………。」
「回収屋を履き違えるな」
「…はい。すみませんでした」
すると突然、俯く黒崎の肩に腕を回し、烏間は対象のAndroidを指差した。
「見てみな」と言う声色はどこか悲しげで切ない。
対象を見ると、目玉がぐるりと白目を向き、機械的な口調で項垂れている。
『ガガ…ガッ…ガガガ』
「“自我崩壊(バースト)"。あれが違法Androidだ」
「そんな」
自我崩壊(バースト)…───。
他刺激調整機能、無意識的防衛機能の崩壊。これにより、Androidはただの兵器へと変貌する。
それがパルディック社製のAndroid。
それが“違法"と言われる由縁。
『ガ、ガッ…ガガガ…』
次の瞬間、対象は刺さった支給刀を抜き取り、高く跳躍した。
いまの加藤悠希にあるのは、破壊的衝動だけ。
そしてでたらめに握る刀を、烏間に振り降ろす。
「烏間さん…───」
白刃に対し、烏間は左足を軸に、後回し蹴りを見舞う。
刃と足裏が触れた瞬間、甲高い音と供に、何かが宙を舞った。