SAMURAI PLUM

放物線を描き、屋上に突き刺さるそれは白刃の刀身。

更にAndroidが着地した瞬間、烏間の左足が頭部を突く。

まるで水切石の如く跳ねるAndroidは、そのまま柵に身を沈めた。

埃が舞い、刀身を失った支給刀が隅に転がる。


「特別製でね」


靴裏のゴム材に仕込んだ鉄板。それが刃を砕いたのだ。

柵に沈むAndroidに歩み寄る烏間。対象の首を掴み、宙に浮かす。


『ガガ…ッ…ガガガ…!』

「そう言えば、何で俺が愛刀を持たないのか聞いたよな」

「え、あ、はい」

「それはな…───」


刹那、Androidの首は握り潰され、その手には“核(コア)"だけが残る。

E2(エルマイム・エネルギー)が飛沫を散らし、烏間を鮮血に染め上げる。


「刀なんかなくても、どうにでもなるからだ」


頚椎部にある核(コア)。全機能の始点であり、言わばAndroidの心臓。

つまり核(コア)を喪失すると、Androidの機能は全停止するのだ。

だがいま問題視すべきは、Androidの構造などではない。

Androidの骨(合金)をも砕く、烏間の握力である。

屋上に崩れ落ちるAndroid。足元に広がるE2(エルマイム・エネルギー)。

輪郭を滴る鮮血(※E2)を見て、ふと黒崎がこんな事を呟いた。


「…“鬼面(strawberry face)"」


遠くで悲鳴をあげるAPO社製のAndroid。

当然だ。愛した者が、無情にも葬られたのだから。


「…何で俺がSAMURAIになったのか聞いたよな」

「は、はい」

「…“それしか"なかったからだ」

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