PRECIOUS?
☆☆☆☆
空港内は一定の歩幅を保ちながら、人が往来していた。人の流れを横目に見ながら、美奈は発着ロビーで飛行機の到着を待つ。
寂しさ。
その感情は誰しも持つものであろうが、美奈も例外ではなかった。大輔と別れたのが二ヶ月前。その一ヶ月後には新しい彼氏ができた。その彼氏は海外を渡り歩く商社マンだ。今回、美奈はその転勤についていくことになっている。
忘れられない。
本当にこれでいいのだろうか。美奈の脳内を大輔が埋め尽くす。振ったのは彼女であり、大輔との思い出も記憶の中に鍵をかけようとしている。
発着ロビーに飛行機の到来を告げるアナウンスが入る。美奈は重い腰をあげる。
大輔と別れたきっかけは、些細な出来事だった。そう、彼の携帯メールを見てしまった。
いけない女。
大輔という人間は、多くを語りたがらない。ならば携帯メールをチェックしないわけにはいかない。そこには、歩、なる女性との頻繁なメールのやり取りが行われていた。「ありがとう」「やさしいんだから♡」「また来てね」
『メールは愛の墓場である』、と美奈はこのとき思った。その後、大輔に「この女、誰?」と問いつめるが、彼は何も言わない。無言を同意と判断した美奈は、別れを突きつけた。
本当にあれでよかった?美奈は優柔普段になっている。空港のゲート付近には長蛇の列が出来上がっている。美奈はパスポートをポケットから取り出す。
「美奈!」
聞き慣れた声が彼女の耳奥に響いた。ゆっくり、着実に、彼女は声がする方に振り向く。
そこには、大輔がいた。
「大輔!!!」と美奈。
美奈は並んでいた列から外れ、大輔と向き合う。
「どうして?」
「美奈の友人から訊いた。君にはすまないことをした。君が大切なんだ」と大輔。
「でも、浮気してたじゃない」
彼女のその言葉に、大輔は表情が曇る。
「あれは妹なんだ。妹は重い病気で、支えが必要だった。それに君に心配を掛けたくなかったんだ。その頃は妹の手術が成功するか心配でね」と大輔は言った。
「手術は成功したの?」
「ああ」と大輔は柔らかい笑みを見せ、「だから、美奈、行くな」と美奈を彼は抱きしめた。
人が、空港内が、美奈達に視線を向けている。それでも、それでも、美奈は大輔の広い背中に腕を回していた。
ゲートは占められ、飛行機が飛び立つのを美奈は、大切な人の胸の中で見届けた。
寂しさ。
その感情は誰しも持つものであろうが、美奈も例外ではなかった。大輔と別れたのが二ヶ月前。その一ヶ月後には新しい彼氏ができた。その彼氏は海外を渡り歩く商社マンだ。今回、美奈はその転勤についていくことになっている。
忘れられない。
本当にこれでいいのだろうか。美奈の脳内を大輔が埋め尽くす。振ったのは彼女であり、大輔との思い出も記憶の中に鍵をかけようとしている。
発着ロビーに飛行機の到来を告げるアナウンスが入る。美奈は重い腰をあげる。
大輔と別れたきっかけは、些細な出来事だった。そう、彼の携帯メールを見てしまった。
いけない女。
大輔という人間は、多くを語りたがらない。ならば携帯メールをチェックしないわけにはいかない。そこには、歩、なる女性との頻繁なメールのやり取りが行われていた。「ありがとう」「やさしいんだから♡」「また来てね」
『メールは愛の墓場である』、と美奈はこのとき思った。その後、大輔に「この女、誰?」と問いつめるが、彼は何も言わない。無言を同意と判断した美奈は、別れを突きつけた。
本当にあれでよかった?美奈は優柔普段になっている。空港のゲート付近には長蛇の列が出来上がっている。美奈はパスポートをポケットから取り出す。
「美奈!」
聞き慣れた声が彼女の耳奥に響いた。ゆっくり、着実に、彼女は声がする方に振り向く。
そこには、大輔がいた。
「大輔!!!」と美奈。
美奈は並んでいた列から外れ、大輔と向き合う。
「どうして?」
「美奈の友人から訊いた。君にはすまないことをした。君が大切なんだ」と大輔。
「でも、浮気してたじゃない」
彼女のその言葉に、大輔は表情が曇る。
「あれは妹なんだ。妹は重い病気で、支えが必要だった。それに君に心配を掛けたくなかったんだ。その頃は妹の手術が成功するか心配でね」と大輔は言った。
「手術は成功したの?」
「ああ」と大輔は柔らかい笑みを見せ、「だから、美奈、行くな」と美奈を彼は抱きしめた。
人が、空港内が、美奈達に視線を向けている。それでも、それでも、美奈は大輔の広い背中に腕を回していた。
ゲートは占められ、飛行機が飛び立つのを美奈は、大切な人の胸の中で見届けた。