そしてキスからはじまった
外から声がする甘えたような女の子の声・・

「しおん!いるんでしょ!開けて」

ピンポーンピンポーンと何回も押す

「ちっ・・しつこいなあ」

彼女さんだろうか?

「行ってあげてください」

「う、うん。ジュリアはここを動かないで」

「はい」私はうつむいて答えた

紫音は私の顔を両手で押さえて素早くキスをして玄関に向かった


どうしても彼らの事が気になって二階の窓から外を伺う

内容なんて聞こえないけど女の子の甘えたような声がする


そっと部屋を出て廊下の窓から庭の隅でキスをする二人が見えた。

やっぱり彼女だったんだ・・涙が出てきた。

彼女が来たのに私が待ってても邪魔だろう。早くこの家を出よう

あそこからだと彼らからは見えずに外に出れるだろう

私は急いで一階に降りて荷物を持って外に出た

彼らがいるであろう方向を見たが彼らの姿は見えなかった

きっとまだキスをしながら愛を語り合っているんだろう


家の門から出た私は

「さよなら・・紫音・・」彼がいる方に向いてつぶやいた

もう会うことはないだろう

彼に対する愛の言葉は伝えられなかった

これも運命なんだろう・・

彼の家の近くに咲く花を一つ摘んだ

押し花でもしよう・・

どこまでも未練がましい私・・

涙が止まらなくて誰もいない路地に入って膝を抱えて泣いた

駅に着く頃には涙も止まって駅のトイレで顔を洗って電車に乗って帰った






















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