そしてキスからはじまった
ルイ?・・あっ思い出した。このピアノの持ち主だ

孝が以前そう言っていた。

「ルイさんってこのピアノの持ち主の人ですか?」

「そうだよ」

「私・・以前、勝手に弾かせてもらってました。ごめんなさい。今日も久しぶりに弾きたくなって孝に連れてきてもらいました」

「そうなんだ・・いいよ。勝手に弾いてもらって。
僕も分かっててここに置かせてもらってるからね」

「ありがとうございます」

ルイさんはじっと私を見て

「君はなんで孝と暮らしているの?紫音が言っていた契約のため?」

紫音がそんなことを?なんか悲しくなった。

でも孝とやっていくを決めたんだ。

「・・はい。それもあります。でも好きになりたいと思っています」

「好きに?孝の事を?君は紫音のことは好きじゃないの?」

「し、紫音の事?」そんなことまで紫音が言ったの?

紫音の事・・好きじゃないと言わなきゃいけないのに

青い綺麗な眼で見つめられると言えない

泣きそうになって眼を反らせた

「フッ、やっぱり好きなんだ。そうか良かった
紫音が悲しい顔をするのは僕見たくないんだ。君だけに言うね」

彼は真剣な顔をして少し切なそうに私を見た

「僕も紫音が好きなんだ。だから幸せになって欲しい。そう思っている。
・・変なこと言ってごめんね。男が男を好きって気持ち悪いよね。」

「えっ?そんなこと全然思いません。好きになった人が同性だったというだけだと思います。・・紫音は素敵な人です。わかります。私も幸せになって欲しい・・
そう思いますから」

何か彼が言おうとした時、息を切らせて孝が帰ってきた

そして私たちの秘密の話を終わった。

ルイさんはピアニストになるために音楽家のお父さんに育てられたそうだ

指を痛めて断念したそうだけど彼の演奏は素晴らしかった

きっと紫音に対する報われない想いが切ない調べになっているんだろうそんなふうに思った。



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