そしてキスからはじまった
「紫音・・ねえこれなんて読むの?」

このところ俺は学校の放課後ライブハウスの楽屋に来るのが日課になっていた

店に出勤する前にジュリアが孝と勉強していたからだ。

ジュリアは俺に日本語を聞いてくるようになった。

俺はおふくろがフランス人なのでフランス語ができるので先生には最適ということか・・

どこで手に入れたのか漢字のテキストを持ってきて俺に聞いてきた。


ジュリアは漢字が好きなんだそうで

特に難しい字が・・

読みを聞いてきた字は『薔薇』

「バラだよ、ローズ!」

そんなの俺も書けないよと思うけど

画用紙にテキストを見ながら

「バラ・・ローズ・・」

とつぶやきながら大きく書く、何度も繰り返しながら

唇をかみしめて真剣に・・

可愛くて、可愛くて・・

孝がいなくなった隙を見て

「ジュリア」と呼んで顔を上げた彼女にチュッとキスをした

触れるだけの単にそれだけなのに

驚いたジュリアに

熱くなった自分の気持ちに動揺し

彼女の顔を両手で挟んで激しく長いキスをしていた。

自分の気持ちに気がついた・・

初めて人をこんなに愛おしく想う気持ちに

・・・始まったんだ・・始まってしまったんだ・・

・・俺の恋が・・・

たったキス1つで・…
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